デザインTシャツ【コウシュ】のブログ

短いのに長い旅行記  – 米ペンシルバニア州編

◇準備

この夏、フィラデルフィアに用があり、
せっかく行くのだからと観光を付け加えることとしたのだが、
フィラデルフィア自体は以前も行ったことがあるし、
ニューヨークも近いけれど、今回はニューヨークでなくても、
というところもあって、
フィラデルフィア周辺でごく短期でできることって?と惑った。

少し行けば自然も多いようで
ラフティングのツアーなども見つけたのだが、
同行者に「疲れる」と反対にあい、
最終的に決めたのは、
アーミッシュの人々の暮らしに間近に接する、というテーマでの1泊2日の旅。

アーミッシュの人々が多く暮らす地域のB&Bを手配し、
また、アーミッシュのお宅で夕食を共にするというツアーを申し込む。

アメリカで観光??、とあまりやる気なく、ちょっとした暇つぶし程度に思っていたのが、
楽しみになってくる。

 

◇出発

いざ出発。
ところがだ。
飛行機のトラブルで旅程が大幅にくるってしまう。
アムトラック(電車)で帰宅ラッシュに巻き込まれつつランカスター駅に到着したのは夜7時ぐらい。
(日本のようにギュウギュウ詰めまでは行かないが、
駅では列車に乗るための長蛇の列ができ、1時間ほどの距離を座れない人もちらほらいる感じ)
アーミッシュの家でのディナーは6時ぐらいからとのことだったので、
なくなく事前にキャンセル。

 

 

(ランカスター駅。夏時間でまだ明るい)

 

 

 

ランカスター駅から宿までは車で20分ほど。
日本にいる段階では駅の様子もよくわからなかったので
メールで事前に、タクシーはつかまるのか、なんて尋ねたけれど、
恐るべしウーバー、というか、ごくあたりまえのウーバー。
感じの良い若者が運転する車に乗って宿へ。

この時点で我々は日本を出発して以降、移動以外の何もしていない。
いったい何時間かかってこの地にたどりついたんだ。
計算したくないレベル。
(考えてみれば何もしてないというのはうそだ、中継地のモントリオールで予定外の観光をせざるを得なかったのだった)

 

 

(宿)

 

 

 

とにもかくにも宿にたどりついた、とほっとしたとき、
B&Bの敷地のアプローチを、ふわん、ふわん、と光るものが。
蛍。

思わぬ歓迎に疲れがとんだのだが、
さらに奥に進むと、
畑が一面広がるそのうえには、
無数の蛍が舞っている。

まだ自然が残っていた昔の話、とか、
武蔵野や椿山荘で蛍のイベントで1つ光れば大歓声、
みたいな話でなく、
今のこの時代に、もったいぶることもなく大量に蛍が飛んでいて、
それを見てしまった。
少し放心状態となる。

 

 

(蛍が無数に舞っていた畑。蛍の光をカメラで写すのは難しい。
こちらはiphoneで撮ったものだが中央に1つだけピカッと光っている)

 

 

選んだ宿は「farm stay」ってことで、元農場だった家。
今は自宅用に少々家畜を育てたり畑をやっていたりするよう。
まわりも農場だらけで治安も何も関係ないということなのか、
宿の入り口にも部屋にも鍵はついておらず自由に出入りしてくれとのこと。
良い感じに放置され、余計に気を使うこともない。

 

◇夕食

さてと、というところで、まだ夜ご飯を食べていない。
夜8時である。
あたり一帯畑の真ん中である。
宿は朝ごはんしか出さない。

いいかげん、ちゃんとしたものを食べたい。

こんなときにはYelpとウーバーが登場。
まもなく閉店というお店やラストオーダー終わりましたというレストランが多い中、
夜2時までやってるというお店に電話すると、
レストランエリアはもう終わっちゃってるけど、バーエリアならやってるという。
おつまみ・スナックレベルなのか、
料理らしきものを出してくれるのか確認すると、
ムール貝、パスタ、といろいろある様子。
電話口ですばらしい!と喜んで予約する
(先方はこちらの背景も知らないから笑っていた)。

実際どこに行ったのか、把握できていないのだが、
ウーバー運転手にわけもわからず住所を伝え、30分ほど離れたレストランに向かう。
ちょっとした繁華街(といっても低層の建物ばかり)に
コンクリート造り、かっこいいエントランスの建物。
子連れであることは伏せていたのだが、止められることなくバーエリアに案内される。
オープンしたてのお店だったからか、バーにしては時間が早かったのか、
広いバーエリアには我々1組のみ。
六本木のどこかのラウンジみたいなキラキラの内装、
ふかふかのソファに低い小さな丸テーブルを囲んでの
子連れ御一行様の食事。
前菜からメインまでおいしく食べられてワインも飲めて満足なのだが、
さっき蛍で今六本木、なんたるこのギャップ。
不思議な数時間となった。

 

 

 

 

 

 

(六本木)

 

 

◇朝

時差ボケからかなり朝早く起きたため、
朝露で靴が濡れつつも宿の敷地内を歩いてみる。
もやがかかり、畑や木々の緑と牛の茶色ともやの白色の組み合わせが良い塩梅。
しんとした中、と言いたくなるところだが、
実際のところはトラックの走る音が割と頻繁に聞こえてくる。

 

 

 

 

(宿の敷地。牛や他の家畜も飼っているよう)

 

 

 

 

 

(宿の庭。朝焼けが美しい)

 

 

 

ひたすら何もしない旅を、と思っていたので、
読書をするでもなく、スマホを開くでもなく、暇をもてあます。
いったん、2階の部屋に戻り、うつらうつらしていると、
1階の会話が聞こえてきた。
車で誰かが宿の敷地に入ってきた様子、犬も吠えていたし、
宿の人ではないのだろう。
朝6時ぐらい。
同行者が1階で対応しきれなくなったのか、ヘルプを求められる。
ぼうっとした格好のまま降りていくと、
わりといけいけ気味の化粧ばっちりのおねえちゃんが。
入り口が開いていたから入ってきてみたとのこと。
我々は住人でないしホストでないと伝えると、
宿はどんな感じかなど質問され、なぜかこちらも宿の宣伝をする。
多少あやしい訪問者だったけれど、まあいいか。気にしないでおこう。

 

◇アーミッシュ

 

 

 

 

(宿の敷地内)

 

 

 

 

 

 

(こちらの建物には干し草がたくさん)

 

 

朝、宿のひとなつっこいビーグル犬とともに宿の敷地の外を出て散歩をしていると
遠くから馬のテンポ良い足音が聞こえてきて、
遠くもやの中に馬車のような影がこちらに向かってくるのが見える。
早くもアーミッシュの人に接することができてしまった。

電気などを使わず、昔ながらの生活を続けている人たち。
すれ違うと(美女だ)、観光客に慣れているためか、にこっと笑顔を向けてくれる。

 

 

(馬にひかれたカートに乗ってこちらに向かってくる美女)

 

 

 

アーミッシュの家庭でのディナー体験は逃してしまったので、
宿のオーナーに、周辺でアーミッシュの暮らしが見られるところはないか、と
たずねると、
お隣の敷地はアーミッシュの一家のものだとのこと。
ふらっと勝手に敷地に入って行って乳しぼりさせてくださいと言えば
させてくれるわよ、という。
念のため、電話しておいてくれるとのこと。

コーンの畑に沿ってしばらく道を歩くと次の農場が見えてくる。
言われた通り、ずかずかと敷地に入っていくと、
自然の素材で染めた風合いの紫や紺の衣類が長い長い1本のロープに大量に干してあり、
自宅の菜園らしきところで若い女性が赤ん坊と一緒に手入れか収穫か何かしているのが見える。

隣の宿に泊まっているものだと名乗り、牛舎を見せてもらえるか尋ねると、
快く案内してくれ、
さらに、乳しぼりや子牛へのミルクやりをしてみたいか、と
向こうから提案してくれた。

牛舎に入ると若い男性2人が干し草を農具で一生懸命ひっくり返している。
男性は白いシャツ、サスペンダー、黒っぽいズボン、ハット、といういで立ち。

さきほどの女性は「娘さん」という感じのとても若いお母さんで、
頭には布をかぶり、あの自然の風合いのワンピースにエプロン。

牛舎の中では、両サイドに牛がいるのだが、牛たちは柵付近で糞尿をあたりまえに出すので、
あたりを歩くと靴の裏にはもちろんつくし、それが洋服にもはねる。
そんななかアーミッシュの人々は皆裸足。
こちらに牛の乳しぼりをさせてくれるため、泣く赤ん坊をそのまま地べたに座らせる。
決して汚いというイメージはなく、むしろ清潔感すらある。
こちらの子供は最初は嫌がっていたが、糞と言ってももともとは草だしね、
と自らの考えをあらためた様子。

宿の人から言われていたのは、
アーミッシュの人たちは海外旅行など行かないから、
外国の人が来ると喜ぶし、アジア人なんて特に珍しく思うだろうとのこと。
また、ファームを見せてくれたら、お礼に何かを渡した方がよい、
ということだった。

お礼に渡すものなど想定外で特に用意はしていなかったのだが、
ちょうど持っていたどら焼きを渡すことにする。
すると、「もう1度どこから来たのか教えて」と尋ねられる。
返答すると、「Japanね」とこちらの答えをくりかえす。
Japanを知ってるのか知らないのかわからないが、
少なくともこれまでJapanに関わったことはなかっただろう、
どら焼きを食べて何を思っただろう。

その後、太陽の照り付ける中、
周辺を歩き回ったりレンタサイクルに乗ってまわったのだが、
干してある洗濯物を目印に
アーミッシュの家が識別できる。

朝みかけた簡単なカートのような馬車のほか、
屋根もついてて後ろに反射板もついている馬車と何度もすれ違う。
普通の自動車も走っている道路なので
ときおり馬車の後ろに小さな渋滞ができる。
こちらが馬車を眺めると同時に先方もこちらをじろじろ見る。
どちらが見られているのかわからないような状態。

 

 

 

(屋根付きのほうの馬車)

 

 

 

電気などを使わず、昔ながらの生活を守り続けている、
という彼らであるものの、
決して、全く使わないというわけではないらしく、
良い悪いを判断しながら受け入れていく、ということらしい。
家の前の芝刈りは、電動の道具を使っているのを何件か見かけた。

実は30年ほど前にこのあたりを母に連れられてまわったことがあり、
アーミッシュの家を通りがかったのも覚えている。
記憶がぼやけたせいなのか、事実そうだったのか、
なんとなく土埃にまみれた印象で、
あたりの家々(アーミッシュでない人の)も田舎で貧しいような記憶となっているのだが、
今回訪れたこの地域の印象は、
道路はピカピカに舗装され、
アーミッシュの家庭含めて建物が立派、
アメリカってリッチ、潤っている(もちろんそうでない地域もあるだろうけど)、
と思わせるものだった。

 

◇アイスクリーム

はりきって予約したレンタサイクル
(フライトの影響を受けて1日後ろ倒しにする手配も発生)であるが、
この夏の日本の猛暑に負けず劣らず暑かったこの日、
日陰のない畑のど真ん中で自転車でまわるというのは自殺行為に近く、
1時間もしないで切り上げる。
事前の調べではレンタサイクル屋のある周辺には
良さそうなカフェやレストランも少しある様子だったのだが
もう探しに行く余力もなく、
とりあえず自転車屋の隣の何の変哲もないカフェに、
もう涼しければそれでOK、ということで入る。
トイレで鏡を見ると、薄暗かったせいもあるのか、
自分の頬が黒く、しみが大量発生したようにも見えて驚愕。
この日のサイクリングはつくづく無謀であった。

アーミッシュの牧場にある搾りたてのミルクで作ったアイスクリームのお店、
というのに本当は行きたかったのだが、自転車でたどりつくことができなかったため、
こちらのお店でアイスクリームのショーケースを見る。
あまり惹かれない。
サンドイッチやサラダもパックに入ってショーケースに並ぶが、
うーーん。
ということで、レモネードで喉を潤すことにする。

やっと心身落ち着き、店内を見渡すと、
気づけば、アーミッシュの人々が休憩している。
金髪、ショートパンツの女子のグループと、
白い布をかぶった清楚な女子のグループと、同じレジに並んでいるし、
白シャツにサスペンダーのアーミッシュのおじいさんが何時間もそこに座っている風の席もある。

結果としては地元に根差したお店に入ることができたよう。

 

ランカスター周辺の旅はこうして24時間もたたずに終わったのだが、
たまにはこんな素朴な旅も良い。

 

 

Thank you for visiting ! 

 

 

 

 

KOUSCH【コウシュ】- 1枚で存在感のあるデザインTシャツ。仕事や休日を心地よくクリエイティブなものに。

 

 

 

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