デザインTシャツ【コウシュ】のブログ
ドナルド・ジャッドという現代彫刻家がいる。
本人はミニマルアーティストと呼ばれるのを嫌がったが、
ミニマルアートのど真ん中にいた人である。
ジャッドの有名な作品は例えば壁から金属のでっぱりが縦に一列並んだ「Untitled」である。
これを階段のような、などと勝手に表現してはいけない。
なぜなら何にも例えられないはずのものを作っているから。
ドナルド・ジャッドは、自らがアーティストでありつつも、
もう1つの顔としては、哲学や美術史の学位を取り、美術雑誌での批評などの仕事もしていた。
生涯を通じて、人類にとっての芸術的表現の大切さを説き、
また、自らも、たいへん深い考察のうえに創作した。
ドナルド・ジャッドの考えは、
それまでの装飾的であったり何かを説明したりするような絵画や彫刻を全面的に否定し、
そこにあることが美しい、さらに言えば、そこにあることそのもののみが美しい、ということを突き詰めるものであった。
なので、同じ抽象的な表現であっても、
抽象表現主義のように作家自身に内在する想いを抽象的に表すのではなく、
作家の存在を消し、作った過程の影もなく、工業的に作られたモノによって
理性的に、そして、最小限で表現する。
その考えを進めていくと、
作品を展示する美術館自体にも不満が出てくる。
様々な作品が混沌と展示されてしまえば、本来の目的である、
「そこにあることそのもののみが美しい」ということを究極的には実現できないと考える。
作品が置かれる環境を含めての理想の姿を追い求めたドナルド・ジャッドは、
DIA芸術財団の支援のもと、
1979年、テキサス州プレシディオ郡マーファ(Marfa)の
米軍基地の跡地340エーカー(約1.4平方km、東京ドーム30個分だそう)を買い取る。
Marfaがあるのはここ。
メキシコの国境にかなり近く、
テキサスの真っ青な空の下、木もまばらなだだっ広い大地の中に、
米軍基地の倉庫だった建物などがたっている。
ドナルド・ジャッドはその後、自分の作品をどんどんそこに保管し、
1986年に「Chinati Foundation」をオープン。
Chinatiとは、Marfaの近くの標高2,300メートルぐらいの小さな山脈の名前で、
もともとは、アパッチの「山」を表す言葉。
Chinati Foundationには、ドナルド・ジャッドの大型の作品を置く建物がある他、
アーティストの住居やリサーチセンターもある。
例えば、大砲の倉庫だったところに
ドナルド・ジャッドの作品「100 untitled works in mill aluminum, 1982-1986」がある。
環境・建物によってそこに置くべき作品が決まってくる、という考えのもと、
建物を光があふれる空間に変えたうえで、
100個のアルミニウムの物体(約104cm x 130cm x 183cm)が並ぶ。
時間を追って陽の光の入り方も変わり、アルミニウムの物体の見え方も移ろう。
Marfa自体は人口わずか2,000人の町であるが、
この美術館は周辺地域の発展にも貢献し、この辺鄙な地に観光客をひきつけている。
2005年にはPradaプラダのマーファ店が登場。
それは嘘で、
ベルリンの2人組のアーティストであるElmgreen & Dragsetが作った作品。
砂漠の中にポツンとプラダのブティックがあり、
靴やバッグが美しく並べられている。
しかし、実際には買うことはできない。
砂漠の中でプラダなど何の役にも立たないのに敢えてここにある、というのに惹かれる人や、
貧しい移民やドラッグ売人が通るルートにあえてプラダの店があることに不快感を覚えるところから興味を持つ人もいれば、
店なのに店でない、というところをおもしろいと感じる人もいる。
さて、この地に興味が出てきた人もいるだろう。
そこで、Marfaの観光ガイド動画をご紹介。
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ダラス経由でエル・パソ空港へ。エル・パソ空港からHighway 90を車で運転して3時間。