デザインTシャツ【コウシュ】のブログ
フィガロ Figaroという名はいろいろなところに登場する。
モーツァルトのオペラ「フィガロの結婚」、
表参道にあるカフェ(ブラッセリー)「フィガロ」、
女性ファッション誌の「フィガロ」、
ディズニーのピノキオに登場する猫「フィガロ」、
1991-92年の日産の伝説の小型オープンカー「フィガロ」、など。
日本だと、なんとなくフランスっぽくおしゃれな名前、ぐらいの印象で、
フランス人にはフィガロと言う名のかわいい女の子が居そう、と筆者自身思っていたが、
これらの名前の起源は・・・
上記で言うと、「フィガロの結婚」のフィガロである。
フィガロは理髪師。
そして同時にロッシーニのオペラ「セビリアの理髪師」に登場する理髪師その人である。
「フィガロの結婚」は
フランス人の戯曲家ボーマルシェ(Bearumarchais)の戯曲で、
「セビリアの理髪師」の続きのお話。
ボーマルシェは本名をPierre-Augustin Caronといい、
ニックネームはFils Caron(フランス語でCaronさんちの息子)だった。
このFils Caronの読み方がほぼFigaroで、
自分の戯曲に登場するこの理髪師の名をFigaroとした
(実際、スペイン北西部には、Figueroaという姓もあるようなので、これも意識したかもしれない)。
「セビリアの理髪師」のストーリーは、
伯爵が医師の娘と結婚するためいろいろと画策し、
理髪師で何でも屋のフィガロがこれを助け、
結婚を成就させる喜劇。
「フィガロの結婚」では、
せっかく結婚できた伯爵であるが、
今度はフィガロの許嫁にも手を出そうとし、
それに対し、フィガロやその他の登場人物がそれを失敗させようとする
ドタバタの喜劇。
(さらに続きの第3作「罪ある母」もあるが、これはまじめで暗く不評だったよう)
映画「アマデウス」にも出てくるように、
「フィガロの結婚」はフランス革命前夜の時代、
国王などから危険視された、ということなのだが、
具体的にはどのようなものだったのだろうか。
例えば原作の戯曲の第4幕にこのようなシーンがある。
「Nobility, fortune, rank, position! How proud they make a man feel!
What have YOU done to deserve such advantages?」
(貴族という地位、財産、身分、役職を全て持ち合わせるあなたは
一体何を成し遂げてそれらを得たというのか?)
・・・続く
モーツァルトのオペラ「フィガロの結婚」(台本 by ダ・ポンテ)では
このような反体制的で長いセリフは省略され、
上記のセリフが本来あった場面の歌
第4幕 Aprite un po’ quegli occhi (さあ目をあけろ)
では、恋人への不信感を歌うのみである。
Caronさんちの息子、ボーマルシェ自身はかなりのエピソードの多い人物で、
いくつもの顔を持ち、波乱に富んだ人生を送った。
時計職人の子として生まれ、音楽家や宮廷人、事業家などを経るが、
その経歴の1つには、アメリカの独立戦争への軍事物資提供、というものも。
敵の敵は味方、ということで、イギリスを弱体化させたかったフランスが
ボーマルシェという民間人をカモフラージュにアメリカを支援。
ちょうど啓蒙思想、自由主義、封建主義・特権社会への反抗が高まった時代、
アメリカの独立を目の当たりにし、感極まったボーマルシェは、
自らはルイ15世の王妃たちに音楽を教えていたりと、体制側にいたにも関わらず、
この戯曲を創作する。
貴族たちも自分たちに矛先が向くとは想定していなかったのだろう、
まるで他人事のようにこのドタバタ劇に熱狂し、
国王に上演の許可を求めた。
演劇としての初演は1784年、モーツァルトのオペラの初演は1786年。
ナポレオンは、このとき既に革命が動き出していた、と触れている。
1826年に創刊されたフランスの新聞「Le Figaro」は
戯曲「フィガロの結婚」に魅せられた
2人の編集者Etinne AragoとMaurice Alhoyによるもの。
「フィガロの結婚」にある一節
「“Sans la liberté de blâmer, il n’est point d’éloge flatteur”
(批判の自由なしに真の称賛は存在しない)」
をモットーとしている。
そして、このLe Figaroから派生したのが、1978年創刊の雑誌Figaro Magazine。
この雑誌は、カルチャーや生活を特集したページも多かったため、
女性の読者も多く、1980年女性誌として別途発刊されはじめたのがMadame Figaro
(日本の女性誌フィガロジャポンの本家本元)。
こうして、本来、反体制、急先鋒の意味合いの強かったFigaroの名は、
(日本では?)フランス、おしゃれ、というイメージに変遷していくことに。