デザインTシャツ【コウシュ】のブログ
黒。
日本では武士の台頭とともに広まっていった色であり、
江戸時代になると、
墨色、涅(くり)色、漆黒、
濡羽色(ぬればいろ、カラスの羽根が濡れて艶が増したような色)、
鉄黒、消炭色、憲法色、
とその色合いによって区別がつけられるようになるほど、
日本人にとって黒はこだわりの色であり続けてきた。
他方、西洋を見ると、
黒は、歴史的には、
うちに秘められた何かがあり、
人の力を超越したものとして恐れられてきた色である。
しかし、19世紀後半になると画家たちがその魅力を認識し始めた。
色の魔術師とも謳われるマティスは
「le noir est une couleur en soi」(黒は1つの色彩である)
と言って、晩年、絵筆を取るのが困難になってきた時期、
切り絵の「Jazz」シリーズに黒を多用、
また、
ヴァンス(ニースの北の小さな村)のロザリオ礼拝堂には、
真っ白のタイルに黒の輪郭だけの聖母子の素画を描き、
それを空・植物・光を表す青、緑、黄色のステンドグラスでとりかこむ。
年月をかけて極めた究極のシンプルな白黒の世界と
それをとりまく明るい色彩の世界とで
人々が平和とやすらぎを見いだせる空間をつくったのである。