デザインTシャツ【コウシュ】のブログ
ジン。
カクテルに使われる蒸留酒(spirits、醸造酒の蒸気を集めて冷却することにより濃縮されたお酒)。
昨今、作り手がこだわりをもって少量生産するクラフトジンが世界的にブームになっている。
日本でも、クラフトジンが楽しめるバーが多数みつかる他、
日本酒や焼酎の蔵元がジンをつくったり、
クラフトジンのみをつくる専門の蒸留所、京都蒸留所や、
虎ノ門や秋葉原、横浜などの商業施設に併設された都市型蒸留所
も出現している。
さて、このクラフトジンとは?そしてなぜブームが来ているのか?
ジンは、さまざまな原料の蒸留酒(ベーススピリッツ)を
ジュニパーベリー(Juniper berry、西洋ネズ)で香りづけしたもの。
ジュニパーベリーの香りは、ウッディ、苦み、甘み、温かみがあるなどと表現され、
無印良品のエッセンシャルオイルや、S&Bのスパイスシリーズでも手に取ることができる。
ベースとなる蒸留酒の原料は、穀物や廃糖蜜が一般的であるが、
クラフトジンでは、果物やお米が使われることも。
ここ最近で言うと、コロナ禍、余ったバドワイザーをクラフトジンとして再生させる取り組みも出ている。
また、ジンの特徴はジュニパーベリーを使うことであるが、
これに加え、各種ハーブや草、根、種、皮など(「ボタニカル」)を配合し、
個性あるものに仕上げるのがクラフトジン。
くせが少ないからこそ、様々なカクテルのベースとして使われ、
だからこそ存在が当たり前で、
マニア以外は注目してこなかったこの蒸留酒、
なぜここに来てムーブメントが来ているのか?
その端は、アメリカの禁酒法(1920)、リーマンショック(2008)の2つが絡み合っていそう。
移民の国、アメリカ。
移民の中には当然ビールのおいしい国、蒸留酒のおいしい国から来た人たちがおり、
全土に家族経営の醸造所、蒸留所があったのだが、
禁酒法によって生き残れたところはごくわずか。
こうしてアメリカでは、
国産ビールといえば大手2-3社がつくる薄くて喉をうるおせさえば良いもの、
蒸留酒といえば輸入に頼る状況に。
時はぐっと一気に進み、2008年前後、リーマンショック。
利便性や金銭的価値をひたすら追い求めていた人たちが大きなショックを受けた結果、
コミュニティだったり、家族との時間、地元の食材、地産地消、
サステナビリティといった価値観にシフト。
そのような中で、クラフトビールやクラフトウィスキーを造り出すものも現れる。
行政側も醸造や販売の規制を緩和、
特にそれまで「いけてる」ものが殆どなかったビールにおいては大ブームとなり、
他ジャンルの酒にもクラフトブームが広まっていった。
例えば、2008年創業のコーヴァル蒸留所は、
実家が蒸留所兼ワイナリーだったというオーストリア出身の夫ロバート・バーネッカーと、
シカゴ出身でモデル、教授という経歴をもつ妻ソナト・バーネッカーが設立し、
クラフト蒸留所(マイクロディスティラリー)の先駆けとなる。
コーヴァル蒸留所はウィスキーとともにクラフトジンも作る。
また、アメリカでのクラフト蒸留所ブームに影響を受けた
ホール氏とゴールズワージー氏はウエストロンドンにジンの蒸留所シップスミス(Sip Smith)を設立。
1800リットル以上の規模でしかジンの蒸留は認めない、という1751年以来の英国の規制を
政府に働きかけて緩和させることに成功し、
これをきっかけにイギリスでもジンが大ブームに。
今やイギリスにおいて、飲まれる量はウィスキーを抜いたと言われる。
そしてイギリスで蒸留所のある地といえばスコットランドであったが、
ジンについてはイングランドに多数の蒸留所ができている。
盛り上がりすぎて、もはやブームも終わりでないかという声も聞こえてきている。
ウィスキーは3年以上熟成させなければならないが、
ジンは熟成させずともすぐに販売できる、というビジネス的な事情もあるだろう。
また、ジンの定義がだいぶ広い
(たとえばEUの規制では、アルコール度数37.5%以上で、自然な植物原料を使って蒸留されている、
というのさえ満たせば「ジン」と呼べる)ため、
個性を生み出しやすいというのもあるだろう。
インターネットやSNSで情報がすぐに伝わるこの時代、
全世界にこのクラフトジンブームは広まった。
たとえば香港では、
白蘭花、サンダルウッドの他、陳皮、当帰、等の漢方を材料にしたクラフトジンを
つくるところも。
他方、ジンはストレートで飲むというより様々なカクテルにアレンジして生かされるべきであり、
特性を出しすぎるのはどうだろう、基本にこだわりたい、というメーカーもある。
さて、家飲みにもジンを取り入れてみては?
例えば、
お茶や桜、ゆずを材料に使った日本のジン、
温州みかんを肴に、ストレートで、
というのもおすすめ。