デザインTシャツ【コウシュ】のブログ

 

Tシャツと現代アートの関係を語るにあたり、
もう1人はずすことができないのが、Keith Haring(キース・ヘリング)(1958 – 1990)。

Keith Haringと言えば、
赤ん坊が這う姿の「Radiant Baby」(radiantは光り輝く、喜びに満ちた、の意)
や、黒い太線で描かれた人の形や犬の絵、
それを蛍光色で彩ったグッズが日本でも大流行した時代を思い出す人もいるだろう。

Keith Haringは、
地下鉄の駅の広告掲示板で広告が貼られず黒い紙の貼ってある空きスペースに
チョークで瞬間的にラクガキ(graffiti)をしては逃げる、
ということを繰り返し、脚光を浴び、有名になっていった。
そういう文脈で語られがちなので、

ただおもしろいことをしたかった若者が壁に絵を描いて
ニューヨークにポップショップを作ったら
なんだか格好良くて、あたっちゃったんでしょ、

というふうに思ってしまう。
が。

 

例えば、
「Radiant Baby」は、
「The reason that the ‘baby’ has become my logo or signature is that
it is the purest and most positive experience of human existence」
(赤ん坊というのは世の中で一番ピュアで、人類が存在するうえで最高の経験)
という思いが詰まったもの。
少年時代にキリスト教にはまっていたことも影響しているとも言われ、
マリア像やキリスト像の背景にある輝きのモチーフが、
赤ん坊のまわりをとりまくRadiantの線と重なる。

そして、
60年代に少年期を過ごしたという時代的背景もあろう、
Keith Haringは当初から社会問題に強く関心を持ち、
学生時代ヒッチハイクで旅した際は反ニクソンのTシャツを売って日銭を稼ぎ、
アーティストとして売れてからも、
核問題、エイズ、LGBT、ドラッグ、環境問題、人種差別、貧困、消費社会、資本主義社会、個人の自由などを
テーマにした作品をたくさん作っている。

また、
批判を承知でポップショップを開いたわけは、
アートの評論家やギャラリー、収集家たちが自分の作品を買うのも、
お店で気軽な金額で自分の作品を買うのも、それは同じこと、
より多くの人に自分の作品に触れてほしいからであって、
お金儲けのためではない、という信念があってからこそであった。

晩年(といっても、まだ20代のおわり~30代初めであるが)は、
ごく近くの親しい人たちが次々と死に、
自身もエイズで死にゆくことがわかっているからこそ、
世界のこと、人々のことに、力の限り思いを巡らし、
財団を設立、精力的に大量の作品を作ったり、こどものためのプロジェクトを実行した。

 

小淵沢の中村キースへリング美術館は、
Keith Haringを知るのに最適な場所。
美術館がKeith Haring作品で埋め尽くされ、芸術的な素晴らしさに気づくことができる。
そして見終わったら、Keith Haringへの尊敬の念、畏敬の念を胸に美術館を出ていくことになるだろう。

 

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